第104回(1996年8月分)「リスク(危険)と共に生きる」
2013.06.06
景気や商売について、「冬は寒く、夏は暑くなければ景気はよくならない。」とか「天候に逆らって、商売が成功することはない。」という話を聞いたことがあります。今年は、夏らしい夏で、景気・商売に良い影響を与えるはずでしたが、意外なアクシデント(事故?)が起こりました。例の「O-157」病原性大腸菌による食中毒事件で、鮨屋さんをはじめ、外食産業やプール等遊泳施設まで顧客が減るという大打撃を受けました。原因がはっきりと特定されないうちに、カイワレ大根に疑惑がかかり、消費者に疑心暗鬼の気持ちが湧いて生野菜の消費まで減ってしまいました。この一連の経過を見ていて、私は二つのことを感じました。
まず一つは、現在の情報化社会においては、一つの情報(例えば、カイワレが原因かもしれない)が、一個人、企業・業界の存在を左右するほどの衝撃を瞬時に全国的に与えることです。厚生省が情報公開をタイムリーに、しかも客観的にしようとして、事実(カイワレを食べた人に食中毒発生)を発表した結果が、カイワレ業者いじめになってしまったことは、重大な問題です。情報の伝え方と情報を受けた後の反応行動の予想について、まだまだ研究しなければならないと思います。
もう一つは、「この世の中は、一寸先が闇」であるから、先への準備が大切ということです。会社においては、会社の存続こそ一番の重要課題ですから、アクシデントに耐えられる企業体力が備わっていなくてはなりません。私達は日々の活動において、個人の人間力を高め、会社としての営業力・生産力を高め、そして財務内容を充実させることによって、如何なるアクシデントも乗り越える企業体力を養っていかなければならないと痛感しました。