第273回(2010年9月分)「日本初の印刷・出版は奈良から」

2014.02.04

9月15日に節用祭という印刷に関係ある祭礼に参加した話です。近鉄奈良駅近くの漢国(かんごう)神社内に林神社という小さな神社があります。この林神社は、1350年頃(南北朝時代)に中国から来日して日本で初めて饅頭を作った林浄因という方を祭神としています。従って、菓子業界の方々の信仰が厚く、毎年春に日本で唯一の「饅頭の社(やしろ)」である林神社に集って、盛大にお祭りしています。

そして、この林浄因の子孫で林宗二さんが、安土桃山時代に国語辞書の先駆けとなる「饅頭屋本節用集」という本を出版しました。出版の歴史を遡ると法隆寺の「百万塔陀羅尼経」が日本は勿論、現存する世界最古の印刷物ということになっています。このように昔は、神社・寺院・役所が木版印刷をすることはありましたが、「饅頭屋本節用集」は民間人が文化・商業活動の一つとして行った印刷・出版事業の最初として意義があります。「節用祭」には、林浄因さんの子孫が東京からわざわざ参拝に来られているのもびっくり驚天でした。

私達の住んでいる奈良には、歴史的なことが特にたくさん山積しているのですが、あまりに知らないことが多いのを実感した次第です。

一覧

このページの先頭へ